おじさんは「オヤジ狩り」にあうのである。

ひとりぼっちは、寂しい。なんだか、僕だけが、みんなとは違う時間の流れにいるみたいで。一生懸命声を張り上げても誰からも気づいてもらえない。そんな気持ちは、それは、年齢をいくら重ねても、変わらなかった。

 

オヤジ狩られたことがある。
「オヤジ狩り」はあくまて、狩る方の言い分だ。

狩られる方としては、やはりオヤジ狩られなのだ。
まぁ、そんな事は、誰も聞きたくないだろう。
だから、先を急ぐ。

友人とふたりで秋葉原をあてもなく歩いていた。
なぜか、その時は、ふたりとも同じような
リュックサックを背負っていた。
だからなのか?

そんなふたりが、細い路地に足を踏み入れると、
10代後半の少年たちが目配せをしている。
嫌な空気を感じたけれど、躊躇する事なく歩く。
少年たちは、おっさんふたりが目の前を通過するたび、
ゆっくりと後からついてきた。
エストサイドストーリーのテーマソングが流れたなら、指を鳴らしながら、踊り出しそうな勢いで。

そして、物陰から、ひときわ大きな少年が出てきて、目の前に立ちはだかる。
僕の中で、曲はスパッと止む。
ひと呼吸置いて、別なメロデイでゆっくりと、
彼は歌い出す。
………そんな訳ない。
彼はゆっくりと話しかける。
「ちょっと、こっちに来て話そうよ」と。
その声には、柔らかいけれど有無も言わせぬ
意思があった。そして、僕の友人の隣に来て、
肩に手を回し、誘導しようとしている。
ここまで、僕にはいっさい目を合わせなかった。
後ろからついて来たダンサーズも、
友人をただ、見つめていた。
友人は「いや、急ぎますんで」と言って、
一切取り合わないようにする。

しばらく「来てよ」、「いいです」の応酬が続く。
途中、僕は、友人に大丈夫か?と声をかけたが、
そこにいるすべての人から、無視をされた。
僕の中で、恐怖心が小さくなっていき、
寂しさが大きくなってくる。
だから、少しだけ離れてみた。
……うん。誰も僕を気にかけてない。

ここまでくると、別の恐怖心が湧いてくる。
ひょっとして、見えてない?
だから僕は言ってみた
「じゃあ、俺、先帰るね」

今度は僕に視線が一斉に集中する。

「オメーも一緒だよ!」
もの凄い勢いでキレられた。