ちょっと重く暗い話ですみません。〜チチのチチを考える〜

父が入院した。

息子である僕が初老であるから

まぁ、そんなこともあるだろう。

でも、家族を守り、子供を成長させるために

働き続けてきた、身体が

病室のベッドの上でよくわからない、管をいくつも這わせ

力なく横たわる姿を見ると、

なんだか、想像以上に年を重ねていたことに

改めて気づかされる。

規則的に落ちていく点滴の先の腕は、

皮膚がたるんでしわしわだ。

病院で借りている浴衣からのぞく、胸も筋肉もなくなり

肋骨が浮き出ている。

うん?そういえば、父の乳を

こんなにまじまじと見ることなんてなかったなぁ。

・・・チチのチチか。

そう、駄洒落などという不真面目な言葉では言い表せない、

素敵な響きがある。

父の乳、声に出して言いたい。

言いたい。

「チチのチチ・・かぁ」

声に出してみたはいいが途中で恥ずかしくなり「かぁ」を

つけてしまった。

そんなんじゃ、完璧な父の乳になっていないじゃないか!

と自分を責める。

よーし、もう一回言ってみようか・・・

と、なにやら殺気を感じた。

入り口の方を見る。

カーテンを少し開いてこっちの様子を伺っている看護士がいた。

・・・い、いつからいたんですか?

って聞く勇気は僕にはない。